こんにちは。ビーグル情報館です。
今回はバーフバリにも影響を与えたとされる『マハーバーラタ』について話していきたいと思います。
ちょっと長いので、気になるところだけでも楽しんでいただけると嬉しいです。
『マハーバーラタ』とは?
古代インドの事件や英雄伝説を元に紡がれた詩の一つです。
ヒンドゥー教の聖典の中でもとても重視されており、西暦320〜550年にインドで栄えたグプタ朝の時代に出来たとされています。作者はインド神話でも伝説的な聖仙ヴィヤーサとされていますが、あまりよく分かっていません。
聖仙ヴィヤーサWikipedia より
『ラーマーヤナ』と共にインド二大叙事詩とされ、どちらもインド神話において重要な文献です。
さらに、『イーリアス(古代ギリシャのもの)』『オデュッセイア(古代ギリシャのもの)』と共に世界三大叙事詩の一つとされています。
『マハーバーラタ』のあらすじは?
『マハーバーラタ』はバラタ族の物語
『バーラタ』はサンスクリット語で『バラタ族の物語』という意味で、元々『バーラタ』と呼ばれる詩篇でした。
そして、バラタ族の栄枯盛衰を描く詩集となっています。
そこに偉大なという意味の『マハー』がついて、『マハーバーラタ』と呼ばれるようになりました。
※挿絵は書きだめしてなかったので少しずつ増やします。
国王シャーンタヌと女神

国王シャーンタヌは、ガンジス河の女神に恋をし、求婚をしました。女神は、自分がどんなことをしても何も言わないことを条件に結婚に承諾をしたのでした。
女神とシャーンタヌの間に次々に七人の子が生まれますが、女神は皆殺してしまいました。しかし、これには深い訳があったのです。

シャーンタヌはずっと約束を守り理由を聞きませんでしたが、八番目の子が生まれた時についに耐え切れず、殺害を食い止めます。そして、女神は約束を破ったシャーンタヌのもとを去ってしまうのです。この八番目の子がデーヴァヴラタ、後にビーシュマとよばれるようになります。

国王シャーンタヌとビーシュマ

女神が去って数年後、シャーンタヌ王は漁師の娘に一目ぼれし求婚をしましたが、漁師に「娘の子が王位を継承できなければ娘はやらん」と言われ、王は大変悩みます。なぜなら、成長したデーヴァヴラタは、文武両道に秀で、理想的な王位継承者になっていたのです。

父の悩みを知ったデーヴァヴラタは、王位継承権を放棄し、王位継承権争いを避けるため生涯の不婚を誓いました。
この困難な誓いの後、彼は恐るべき者という意味のビーシュマという名で呼ばれるようになる。
こうしてシャーンタヌは漁師の娘を妻とし、二人の間には二人の王子が生まれたのてました。そしてすぐにシャーンタヌは死んでしまいます。
三人の王子
ビーシュマの父への献身も空しく、シャーンタヌの二人の王子も、共に後継ぎを残すことなく死んでしまいました。
漁師の娘は「ビーシュマさん。誓いを放棄し王となり、王国に後継ぎを与えてください」と頼みますが、ビーシュマはこれを受け入れず、漁師の娘の結婚前の子、聖仙ヴィヤーサが王子の妃たちに子を授けることになるのです。
これがドリタラーシュトラ、パーンドゥ、ヴィドゥラの三兄弟です。
ヴィドゥラは王子の妃の下女とヴィヤーサの間の子であったため、王子にはなれず、兄二人の相談役となりました。
五人の王子
長男のドリタラーシュトラは生来盲目であったため、パーンドゥが王位を継ぐことに。
この強力な王は狩猟の最中、誤って仙人とその妻を殺してしまったため、王位を退き森に行くことになります。
しかも仙人の呪いで、まだ息子に恵まれていないパーンドゥは生涯女性に触れられなくなってしまいました。
しかし、パーンドゥは第一夫人クンティーが若き日に仙人から授かった呪文の力で、パーンドゥは五人の息子を授かることになる。
これがパーンダヴァ五王子です。
つまり、ユディシュティラ、ビーマ、アルジュナ、ナクラ、サハデーヴァのことです。
盲目のドラタラーシュトラ
パーンドゥの退位後、盲目の兄ドリタラーシュトラが即位する事に。
パーンドゥは第二夫人マードリーの色香に負けその身体に触れ、呪いにより死亡。
クンティーに育てられた五王子はやがて王国でビーシュマとドリタラーシュトラに庇護されることになりますが、ドリタラーシュトラの百人の王子たちはこれをよく想いませんでした。
百王子と五王子
五王子と百王子の対立はユディシュティラと百王子の長男ドゥルヨーダナの間での王国の王位継承権争いによって決定的となる。
これを案じたビーシュマの建言で王国は分割され、ドリタラーシュトラと百王子は元々の王国を、ユディシュティラは辺境の地の国を支配することになりました。
辺境の地の国は繁栄を極め、ユディシュティラは帝王即位式を挙行しました。絶世の美女ドラウパディーもまた五王子共通の妻となりました。
ドゥルヨーダナの嫉妬と勝負
ドゥルヨーダナは嫉妬に駆られました。
そこで母方のおじの入れ知恵で五王子を勝負に誘い、五王子から王国、五王子自身、妻ドラウパディーに至るまですべてを巻き上げてしまいます。
美女ドラウパディーのドリタラーシュトラへの必死の訴えにより、一旦勝負はなかったことにされ、五王子は王国と自分達およびドラウパディーの自由を取り戻しますが、その後ユディシュティラが再度勝負を強いられ、またも負けてしまいます。
その際の条件に従い、五王子は13年間追放生活を送ることに。
13年の追放生活
12年を森で過ごし、13年目は百王子方に居場所を知られずに過ごさなければなりませんでした。

更にこの1年間に見つかってしまえば、再び12年間森で暮らさなければなりませんでした。
五王子は追放の13年をなんとか乗り切り、百王子側に辺境の国の返還を要求しましたが、ドゥルヨーダナはこれを拒否。
両陣営の対決は避けられないものとなって行きます。
こうして王国近郊に、両陣営の大群が集結したのでした。
戦士アルジュナ
大戦が始まろうとしている時、五王子最高の戦士アルジュナは敵方に恩のある人々の姿を見かけたため、突然戦意を喪失してしまいます。
大伯父ビーシュマや武術の師などでした。
二人とも心では五王子を応援していましたが、誓いや禄に縛られて百王子側で戦わなければならなかったのです。
アルジュナの御者をつとめていた五王子の従兄弟クリシュナは、アルジュナに戦士の義務などを説き、戦意を回復させます。
ヒンドゥー教最高の経典ともされる『バガヴァッド・ギーター』の場面でも説かれています。
大戦の開始
いよいよ大戦は始まり、死闘が続きます。
百王子側で最初に総司令官をしたビーシュマは、戦闘10日目にアルジュナによって殺されてしまいます。
ビーシュマの後を継いだアルジュナの武術の師も15日目には倒されてしまいます。更に百王子方第三の総司令官カルナは、17日目にアルジュナの矢によって貫かれました。
カルナの生い立ち
カルナは実はアルジュナの実の兄で、運命のいたずらで兄弟は敵味方に分かれて戦っていたのです。
アルジュナはそれを知りませんでしたが、カルナは大戦前にクンティーから聞いて、大変混乱しました。
しかし、不遇の時代に自分に目をかけてくれたドゥルヨーダナへの忠誠心から、結局百王子方に立って戦地に赴き、アルジュナに敗れ武士道を貫いたのです。
18日目
五王子側もアルジュナの最愛の息子など有力な武将達が死んでいました。
18日目、百王子側最後の総司令官も殺され、百王子方の総帥ドゥルヨーダナ倒されたため五王子側の勝利に終わったかのように見えました。
続く戦い
しかし、実は戦いはまだ終わっていなかったのです。
アルジュナの武術の師の息子は父を殺された事に怒り、復讐に燃えていたのです。
数人の味方と共に五王子側の陣営に夜襲をかけたのです。
五王子陣営では外出していたクリシュナと五王子以外はほとんど虐殺され、五王子の息子たちもすべて殺されてしまったのです。
悲しみの先
カルナの死後に母クンティーからカルナが自分たちの実の兄であったことを知らされた衝撃もあり、五王子は自分達の勝利の味の苦さに苦しみました。
なんとか悲しみから立ち直ったユディシュティラは、弟たちと共に再び統合された王国を統治するのです。
喜びの再開
五王子の母クンティーはしばらく山で修行をしていましたが、山火事に巻き込まれこの世を去る。
王国の36年の統治が過ぎた頃、クリシュナの一族が同士討ちによって滅びたという知らせが五王子のもとに届きました。
クリシュナ自身、兄バララーマとともに世を去っていた。五王子はかけがえのない指導者を失い、世の無常に打ちひしがれます。
ユディシュティラは王国をアルジュナの孫に譲り、弟たちと共にヒマラヤへ向かいました。
妻と弟たちは次々に死にましたが、ユディシュティラはただ一人生き残り、生きたまま天界に上がります。
そこで神々から最後の試練を課され、弟たち、ドラウパディー、カルナ、ビーシュマ、ドローナ、クリシュナなど懐かしい人々との再開を果たすことが出来たのでした。
バーフバリに影響を与えたって?
事実、SSラージャマウリ監督は「バーフバリはマハーバーラタの影響を受けてるよ!」とインタビューで答えています。
また、上のあらすじを読むと、「確かに!」と思うところもありますよね。マヘンドラはカルナと似ているような似ていないような…。
ただ、完全に同じというわけでもなく古代の戦乱ものを作りたくなって、マハーバーラタを参考にしつつ結果バーフバリになったのかなと思います。
オススメの本
マハーバーラタのあらすじだけ見ると「あっ戦争してるな!」となりますが、実際に本を読んでみると神様との距離感も近くて面白いです。
そこでビーグル情報館的なオススメな本を紹介します。
現代版マハーバーラタ物語
挿絵が可愛いこと、一冊にまとまってて読みやすいことがオススメ。反面削られていたり、表現がマイルドだったりと物足りない面もあります。
今買えるマハーバーラタの中ではこれが一番買いやすいかも…?
インド神話ーマハーバーラタの神々ー
物語としてマハーバーラタを読むのではなく、神話としてマハーバーラタを解説してくれる本です。
マハーバーラタの重要な部分を解説して、ほかの神話などと比較考察などもあって面白いです。
マハーバーラタ
先出の『現代版マハーバーラタ』より細かい印象。
ただ全四冊あるので、前の話が思い出したくなって引っ張り出したりするのはちょっと大変かも。
歌舞伎にもなったマハーバーラタ!?
Credit:https://www.kabuki-bito.jp/sp/news/4235
実は2017年10月にマハーバーラタの歌舞伎が上演されていた様子。
私はあまり歌舞伎には明るくないのですが、歌舞伎とインド映画のノリは似ているとも言いますし、これをきっかけにインドの人が日本の歌舞伎により親しみを持ってくれたらなと思います。
私もまたマハーバーラタ歌舞伎やる機会があったら行くぞ!
まとめ
マハーバーラタとてつもなく奥が深い…。
皆さんもマハーバーラタをお楽しみください。