インドの民話『夢で食べた乳粥』


むかしむかしある所にイスラムの神学者とキリスト教の宣教師、ヒンドゥー教の僧侶がおりました。

この三人はとても仲が良く、よく三人で集まってはお話をしていました。

ある日、三人は一緒に出かけ、いつの間にか森の奥深く、ずっと遠い所に行ってしまいました。しかも、とてもお腹が空いてきました。

三人は「こんな森の中で何を食べようか」と相談をしました。

その時、神学者と宣教師が僧侶に「ねぇ、坊さん。あんたは牛乳と米のお布施を貰ってきてくれないかね。そうすれば乳粥が出来るだろうから。私達は薪を集めておくよ」と言ったのです。

僧侶は牛乳と米、それに砂糖のお布施を貰ってきました。それで乳粥が出来たのです。

 

乳粥が出来たものの、一人が食べる分しかありません。しかし人は三人もいるのです。

そこで、三人の考えは、乳粥はそのまま置いておいて三人とも寝よう、いい夢を見て面白い話をした者が乳粥を食べれば良い、と決まったのでした。

三人は寝ました。

しかし、僧侶はなかなかの強か者で、壺を開け、乳粥を平らげ、それから眠ったのです。

 

三人が目を覚ますと、まず神学者が、「私が自分のまた夢の話をしよう」と切り出しました。

「ああ、聞かせてもらうよ」

そこで、神学者はこう話しました。

「私は第五の天界に着いて、そこで神様にお目にかかった。神様は私に『天使よ。汝はずっとこの天界に留まるが良い』と仰せられたのだ。だが、私は、『乳粥を壺に入れたままおいてありますから、それを食べてから戻ってきます』と、答えてきた」

宣教師と僧侶は、「全然面白くないね、あんたの話は」と言いました。

 

次は、宣教師が話し始めました。

「私はキリスト様の御許に行ったのだ。第七の天界の。そこでキリスト様は私に『汝がとても気に入ったから、我が許にとどまるように』と仰せられた。私は『乳粥を壺に入れたまま置いてありますから、それを食べてから参ります』と答えてきた」

 

こんどは、僧侶の番になりましたが、僧侶はうろたえ始めました。

僧侶は言いました。

「ああ、恐ろしい。恐ろしい。私はひどく恐ろしい夢を見たのだ」

神学者と宣教師は促しました。「話したっていいじゃないか」と。

「話せと言われても、恐ろしくてとても口に出して言えない」

「話したっていいではないか」

それで、僧侶はこう話した。

「猿神ハヌマーン様が現れて、乳粥の壺をつかむと私にのしかかってこられたのだ。

そして、『さあ、乳粥をくえ、食わぬと首を絞めるぞ』とおっしゃった。そのまま死ぬか、うまい乳粥を食べるかという別れ目なのだ。私は口を大きく開いたね。

すると、ハヌマーン様が乳粥をそっくり口に流し込まれたというわけさ。私は驚いたね。声もあげられなかったよ。

もっとも、一人は第七の天界、もう一人は第五の天界に行っていたのだから、声が届くはずもなかったがね。

それで私は、乳粥を食べてまた寝たのさ」

 

神学者と宣教師は言いました。

「本当にうまいことやったな、この坊さんは。みんなの乳粥を食べたうえ、わしらをバカにしよったわい。」

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チダ

チダ

ビーグル犬とインド映画が好き。 飼い犬のカブにゃんにはなめられ気味。 最近の目標はインドに行ってレポート記事を書く事。

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