インドの民話『耳のない王様』

耳のない王様

昔一人の王様がいました。その王様のことを、みんなが耳なし王と呼んでいました。

王様は自分の領民の両方の耳を切り取らせましたが、自分は片方の耳だけはついていました。王様は毎朝起きると、横になったまま床屋に髪と髭の手入れをさせました。

 

ある日、床屋が王様の髪と髭の手入れをしていて、耳のある方の側を手前に向けて手入れをはじめました。その時、屋根に止まっていた烏が飛んで来て、王様の耳をもぎ取って飛び、屋根に止まりました。

それを見て床屋は

「王様の耳は切れてない、

耳は烏が持って行った」と言いました。

烏は耳を取って、屋根に止まりました。やがて烏が耳を投げ捨てたので、王様は急いで起き上がり耳を拾いあげ木の葉に包んでしまいこみました。

 

耳をしまってから王様は床屋にこう申し渡しました。「よいか、床屋。わしの耳がもう片方切れてしまったことがら誰にも悟られぬようにするのじゃ。もしお前が口外するような事があったら縛り首にするぞ」

床屋は「王様、口外するようなことは決していたしません。決して。」と誓いました。

 

しかし床屋は、言いたい気持ちを抑えていたので、そのうち我慢の限界が来てしまいました。

そこである日、床屋は森へ出かけて行きました。森の木の下に立ち止まり、声を出してこう言いました。

「王様の耳は切れて無くなった。耳は烏が持って行った。」

すると、その木に非常な力が生じて、葉や枝からそういう声が響きはじめました。

 

そこへ太鼓を作る男がやって来て、木下に立ち止まりました。すると、その木からあの声がして来たのでした。男は「うーん。この木はとても上等だ。きっとよく響く太鼓が出来るぞ」

 

男は太鼓を作り、王様の宮殿の下で太鼓を叩きはじめました。一回叩くごとに、あの声が聞こえて来ます。

「王様の耳は切れて無くなった。耳は烏が持って行った。」

それを聞きつけて王様は床屋を呼び寄せました。王様は「さあ、絞首台に登るがよい。お前は太鼓の男に秘密を漏らしたな」と怒って言いました。

「王様、私は誰にも漏らしておりません」

「誰にも漏らしていない?」

「決して漏らしておりません。これこれという森に行って、その木の下では確かに声に出して言いましたが、人間には誰にも話しておりません」

 

王様は、床屋をその木の下に連れて行きました。すると、木からあの声がして来たのです。太鼓の男もそこに来て、太鼓を叩き始めました。木には猿が一頭いて、その猿が飛び降りてきました。猿は太鼓の男の両方の耳をもぎとり、また木に戻って座りました。

それを見た床屋は

「太鼓叩きは耳がない。太鼓叩きは耳がない。」と言いました。

すると、「王様の耳は…」という声がやんで、太鼓から声がし始めました。

「太鼓叩きは耳がない。太鼓叩きは耳がない。」

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チダ

チダ

ビーグル犬とインド映画が好き。 飼い犬のカブにゃんにはなめられ気味。 最近の目標はインドに行ってレポート記事を書く事。

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